オススメ漫画vol.01 『応天の門』
これぞ本格和風ミステリー
オリジナルの世界観ではなく、東京大学史料編纂所にお勤めの本郷和人氏の監修の下、史実に則ったリアルな平安時代を舞台に、学問の神として有名な若き日の『菅原道真』と、六歌仙としても名高い、平安京きってのチャラ男『在原業平』コンビを主軸に繰り広げられる本格和風ミステリー漫画となっております。
一枚目の三白眼の如何にも生意気そうな少年が菅原道真。
二枚目のフェロモンが可視化されていそうな渋いナイスルッキングガイが在原業平です。
物語は基本的に、左近衛権少将(都を守護するお役目。現代の警察に近い役割を担う)であるワトソンポジョンの在原業平が、文章生(現代の学生だが、現代とは違い身分の高い者やエリートが多い。大体将来良い役職に就く)である平安ホームズ菅原道真に不可思議な事件の話を持ち込み、協力を渋る道真を無理矢理巻き込む形で展開します。
平安時代ですから、当然現在の様に科学は発達しておらず、当時の人々には解明できない不可解な出来事が沢山あります。
「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」という言葉の様に、理解の及ばない奇怪な現象は、当時の多くの人々には『鬼や妖怪、霊魂の仕業』と捉えられてしまいますが、飛び抜けて頭が良く、沢山の書物を読んで含蓄のある道真は「鬼や妖なんてものは存在しない」と一蹴し、持ち前の知識を武器に、あれよあれよと言う間に次々と事件の真相を暴き出していきます。
美しい絵柄と魅力溢れるキャラクター
重厚な物語もですが、線の多い写実的で繊細なタッチで描かれる、個性的なキャラクター達もこの作品の魅力の一つです。
ちょっとお馬鹿で間の抜けた、道真の友人、紀長谷雄や、
街外れで商いをする唐からの渡来人、娼姫、菅原家で働く白梅、等と言ったオリジナルキャラクターも登場し、物語を盛り上げてくれます。
基本的にはシリアスな話題の多い作品ですが、平安一のモテ男業平のチャラ言動、行動や、業平を見下しきった道真との軽妙なやりとり、長谷雄の憎めないお馬鹿さや情けない姿等を随所に挟み、個性豊かなキャラクターによって丁度良い塩梅の緩急がつけられていて、割と大人向けの作品ながら、非常に読み易いのもオススメする理由の一つです。